プレスしわ対策『流入制御工法』・寸法精度変動対策『ストレスリバース工法』
JFEスチール株式会社と当社が共同開発した『流入制御工法』と『ストレスリバース工法』の量産金型への適用について、JFEスチール株式会社のニュースリリース(2024年2月29日)、鉄鋼新聞(2024年3月1日)、産業新聞(2024年3月1日)、日刊工業新聞(2024年3月11日)などに記事が掲載されました。 ※ “ストレスリバース”はJFEスチール株式会社の登録商標です。
『流入制御工法』と『ストレスリバース工法』は、スズキ株式会社の「スイフト」のメンバーフロントバンパーの3部品において、980~1180MPa級の超高張力鋼板のプレスしわ対策および寸法精度変動対策技術として採用されたものです。
『流入制御工法』と『ストレスリバース工法』は、スズキ株式会社の「スイフト」のメンバーフロントバンパー※図1の3部品において、980~1180MPa級の超高張力鋼板のプレスしわ対策および寸法精度変動対策技術として採用されたものです。
図1 1180MPa超高張力鋼板を使用した当社生産部品「メンバーCOMP フロントバンパー」(プレス→溶接組付後 完成品)
一般的に鋼板を湾曲した部品形状にプレス成形する場合において、成形途中に湾曲部に発生する「プレスしわ」と成形後に元の形に復元する「スプリングバック」と呼ばれる現象への対処が必要になります。
超高張力鋼板は車体軽量化に大きく貢献する素材であるものの、鋼板の板厚が薄く強度が高いほど、プレスしわが発生しやすくなります。プレスしわが発生すると、金型が損傷する、目標形状と異なる形状になる、といった課題が生じるため、超高張力鋼板適用拡大の阻害要因になっていました。今回採用された『流入制御工法』は、プレスしわの中でも特にプレス部周囲のフランジに発生するしわを低減させることを特徴とする技術です。一般的にフランジしわはプレス成形時に材料の流入を低減(最適化)することにより抑制できることから、プレス成形時の流入量を多工程で最適化することでフランジしわの低減を実現しました。
寸法精度変動対策として採用された『ストレスリバース工法』は、超高張力鋼板の材料強度の上昇に伴って増加するスプリングバック量の変化(寸法精度変動)を抑制する成形工法です。超高張力鋼板は通常の鋼板に比べ、成形時のスプリングバックと材料量産時の強度の変動幅が大きい傾向があります。そのため、スプリングバック後に正しい部品形状となるように金型形状をより精密に設計する必要があり、事前の金型製作には多大な時間やコストがかかっていました。また、強度の変動幅のある材料を同じ金型で成形した場合、寸法精度の変動により部品公差から外れる恐れが生じます。『ストレスリバース工法』は、バウシンガー効果とよばれる変形の方向を逆にした直後の変形応力は小さくなるという鋼板特性を活用し、寸法精度変動を抑制する技術です。本工法適用により、材料強度が変動した場合でもプレス部品の安定生産に貢献します。
既に当社では、これらの技術を活かしたスズキ株式会社向けの「スイフト」※図2 のメンバーフロントバンパー※図1図3 の量産に入っています。この部品は、当社が2018年3月に次世代自動車センターの会員として入会し、 固有技術探索活動・技術マッチング等のご支援を頂き、2020年度の試作委託事業にて超ハイテン材(1180MPa)試作品開発に取り組んだ成果でもあります。
図2 スズキ「スイフト」<車体画像:スズキ株式会社 ご提供>
図3 メンバーCOMP フロントバンパーのスズキ「スイフト」採用箇所 <ボディー画像:スズキ株式会社 ご提供>
当社経営方針の『働く従業員の「幸福」を達成し、供給する全ての製品を通じて、人々の生活を「豊」にするモノづくりをめざそう!』に従い、今後も自動車部品の超高張力鋼板の技術開発を積極的に進め、車体性能向上や軽量化を実現することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
※ JFEスチール株式会社 2024年2月29日ニュースリリース:
https://www.jfe-steel.co.jp/release/2024/02/240229.html
※ 当社トピックス記事 2021年4月29日『【新技術開発】超ハイテン(1180MPa)成果報告会』:
https://www.okapure.co.jp/index.php/2021/04/29/47/